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おおいた市民総合法律事務所の歩み
   4.大嘗祭、抜穂の儀違憲訴訟
 
抜穂の儀に対する抗議行動 90年1月 違憲訴訟を提
抜穂の儀に対する抗議行動 90年1月 違憲訴訟を提
1988年秋に昭和天皇が重体となり、「自粛騒動」が起きました。このような現状を憂えた大分大学の憲法学の研究者である永田秀樹さんや、 市民運動に関わってきた島田雅美さんたちと一緒に「天皇問題を考える市民の会・大分」を結成し、市民集会を開催したり、行政等への抗議・申し入れをする活動を繰り広げました。
そのような中で、新天皇即位後初めて行われる新嘗祭である「大嘗祭」で用いる米を収穫する「抜穂の儀」が大分で行われることが決まりました。一世一代の代替わり儀式で、 全国で東西2箇所だけで行われる「抜穂の儀」が大分で行われることになったのは、私にとっては運命的なことだったと思います。「大嘗祭」は、天皇が天照大神と共に新穀を食することによって神と接する、 あるいは自らが神格性を得るという儀式であり、このような儀式が現在の憲法の下で行われるということは到底許すことができませんでした。「抜穂の儀」は、そのような大嘗祭の一貫の儀式ですから、 何としても止めさせなければならないと考え、「天皇問題を考える市民の会」で何度も市民集会や申し入れ、街頭宣伝行動を行いました。県教組の協力を得て4万名を超える署名を集め、国会請願も行いました。
しかし、私たちの運動にも関わらず、抜穂の儀は行われ、知事、副知事、農政部長が公金で儀式に参列してしまいました。私たちが監視のため現地に臨んだ際、地元の農協の人たちがかり出され、 公安警察の前面に立たされて私たちの入場を阻止する姿を見たとき、天皇制の本質というものを知りました。
私は自ら原告となって抜穂の儀への公金支出について住民訴訟を起こして違憲性を明らかにすることを決意しました。
 
岡田精司教授をお招きして講演会 大分で開かれた全国政教分離訴訟交流集会
岡田精司教授をお招きして講演会  大分で開かれた全国政教分離訴訟交流集会
1990年1月、原告38名で大分地裁に提訴しました。大分地裁では、宗教史学者である岡田精司三重大学教授、近代史学者である高木博志北海道大学助教授の証言を得て、 抜穂の儀の宗教性を明らかにしましたが、裁判所はこの明らかな宗教儀式への参列を「社交儀礼」であるとして合憲と判断してしまいました。福岡高裁では、宗教学者である洗建教授と憲法学者である横田耕一教授の証言も得ましたが、 に悪い内容の判決を出したのです。当然に上告し、現在最高裁に係属しておりますが、我が国の裁判所が、天皇の問題になると全く「憲法の番人」としての機能を果たすことができず、思考停止してしまうことが明らかになりました。
この「抜穂の儀違憲訴訟」を通じて、「全国政教分離訴訟交流集会」に毎年参加するようになり、全国で起きている大嘗祭違憲訴訟の原告や代理人弁護士の人たちと知り合うことができたのは、大変刺激になりました。 憲法における人権秩序の維持に対する使命感をもって困難な訴訟を遂行している誠実な人たちと会うことは、自分自身の活力となります。
そのような中で、鹿児島の亀田徳一郎弁護士と知り合い、 大嘗祭違憲訴訟の控訴審にも関わることになりました。高裁宮崎支部に10回以上も通ったのは、大変だったけれども、楽しい思い出です。鹿児島大嘗祭訴訟も高裁で敗訴し、現在最高裁に上告中です。
また、93年には、ハーモニーランドの真ん中に多額の県費を費やして建設された皇太子ご成婚記念庭園の違憲訴訟も提起し、これも現在最高裁に係属中です。
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