大分団地新聞に連載しました

【第5回】子どものいない夫婦で夫が死亡した場合、妻は夫の預金を下ろせる?
 第5回目は、相続の問題に関してよくある誤解として、「子どものいない夫婦で夫が死亡した場合、妻は夫の預金をすぐに下ろせる」という考え方について取り上げます。
 子どものいない夫婦で夫が死亡した場合に、妻が葬儀費用や当面の生活費のために夫の預金を利用する必要が生じることがあります。しかし、事は簡単ではありません。子どものいない夫婦では、夫の両親が健在の場合、法律の定める相続分は、妻が3分の2、両親が3分の1で、両親が亡くなっており、夫の兄弟姉妹がいる場合には、相続分は、妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。
 法的には預金の払い戻しは相続分に応じた可分の債権と考えられていますが、銀行の一般的な対応としては、妻が自分の相続分だけの預金を下ろすことはできず、預金を一部でも下ろすためには、両親あるいは兄弟姉妹が一緒に銀行に相続の届出をしなければなりません。
 このような事態に備えるためには、子どものいない夫婦では、お互いに遺言を作成しておくことが重要です。遺言は、自筆で残すこともできますが、記載の不備があると効力が認められない場合もあり、また遺言者の死後に家庭裁判所に相続人を呼び出して遺言書を確認する「検認」という手続を取らなければなりません。ですから、公証人が作成する「公正証書遺言」という形式を取っておくのが確実です。
弁護士法人 おおいた市民総合法律事務所