大分団地新聞に連載しました

【第8回】自然災害の場合は支払期限を遅れても延滞利息は発生しない?
 第8回目は、自然災害の場合は買掛金や借金などの支払期限を遅れても延滞利息は発生しない、という考え方について解説します。
 さて、3月11日に発生した東日本大震災では、多数の被害者を出し、関係者の皆様に深くお見舞い申し上げます。このような大規模な自然災害があった場合に、法的に期限を守らなければならない手続きについて、現実に守ることができない事態をどう救済するかが問題となります。
 例えば裁判所の判決に不服のある場合に控訴・上告などをするのは、2週間の期間内に必ず書面を提出しなければなりません。しかし、自然災害でこの期間内に書面を提出できなかった場合には、自然災害が過ぎた後1週間は提出ができることとされています(民事訴訟法九七条)。また、売掛金や貸金などは、権利の性質に応じて1年〜10年の期間で時効消滅することが規定されていますが、提訴・差押えなどの権利行使で時効の進行を中断することができます。しかし、自然災害で時効中断ができない場合には、自然災害が過ぎた後2週間は時効が成立しないこととされています(民法一六一条)。
 しかし、買掛金や借金などの支払期限が迫っている場合に、自然災害で支払期限が遅れた場合については、期限の利益を失って一括払いとなったり、延滞利息が発生することを救済する規定はありません。むしろ、債務不履行については、不可抗力の主張は許されないという規定があります(民法四一九条)。
 債務者は自然災害で支払うことができない期間の遅延利息(遅延損害金)も支払わなければならないのです。そこで、大規模な自然災害の場合には、支払猶予を認める特別立法・時限立法などが制定される場合があります。
 今回のような大規模な地震の場合は、相当広範に支払猶予を認める立法が必要になると思われます。
弁護士法人 おおいた市民総合法律事務所